商品先物取引の委託者の保護に関するガイドライン・先物被害
本ガイドラインは、商品取引所法(昭和25年法律第239号。以下「法」という。)における商品取引員の勧誘行為等に係る規制についての解釈指針を示すことにより、商品取引員の受託業務の適正化を通じた委託者の保護を図ることを目的とする。
本ガイドラインについては、法の規制の実施状況、商品先物市場を取り巻く社会経済状況等の変化を勘案し、必要があると認めるときは、その内容を見直すこととする。
なお、本ガイドラインの目的を達成するため、商品取引員自らが、所属する組織による自主規制又は各社毎の自主規則を通じて、委託者保護に努めることが求められる。
A.適合性の原則(法第215条)関係
法第215条 商品取引員は、顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行つて委託者の保護に欠け、又は欠けることとなるおそれがないように、商品取引受託業務を営まなければならない。
1.定義
「勧誘」とは、商品取引員が顧客に対して、商品先物取引の委託契約締結又は契約締結後の個々の取引の委託の意思形成に影響を与える程度に商品先物取引を勧める行為をいう。
したがって、初めて勧誘する顧客に「商品先物取引を始めませんか。」などと勧める場合のみならず、既に取引を行っている顧客に「取引枚数を増やしてみませんか。」などと勧める場合も含まれる。
また、このように直接取引を勧める場合のほか、客観的にみて顧客の取引の委託の意思決定に影響を与える程度に商品先物取引のメリットを強調する場合も「勧誘」に含まれる。一方、客観的な事実の確認のみを行うなど、委託の意思決定を全面的に顧客に委ねていると考えられる場合は、「勧誘」には該当しない。
2.勧誘に当たっての前提となる顧客の属性の把握
適合性の原則に照らして不適当と認められる勧誘(下記3.参照)に該当するかどうかの判断を行うために、商品取引員は、顧客に適合性の原則の趣旨を説明した上で、顧客の知識、経験及び財産の状況に関する情報の提供を求め、顧客の属性の把握に努めることが求められる。
このため、商品取引員は、取引を勧誘する顧客について、その申告に基づき、①氏名、②住所、③生年月日、④職業、⑤収入、⑥資産の状況、⑦投資可能資金額、⑧商品先物取引その他の投資経験の有無及びその程度等について、情報収集を行う必要がある。
さらに、これらの情報を記載した顧客カードを作成し、その情報に変更があればその都度更新し、顧客情報を適切に管理することが求められる。
(注1)「投資可能資金額」とは、顧客が、商品先物取引の担保として預託する取引証拠金等(法第217条第1項第1号に規定する取引証拠金等をいい、相場の変動等によって追加的に預託が必要な追証拠金その他の種類の証拠金(以下「追証拠金等」という。)を含む。以下同じ。)の性質を十分に理解した上で、損失を被っても生活に支障のない範囲で取引証拠金等として差入れ可能な資金総額をいう。なお、顧客に投資可能資金額の申告を求める際は、その意味を顧客が理解できるよう、分かりやすく説明することが求められる。
(注2)既に商品先物取引によって損失(評価損を含む。)及び手数料並びに手数料に係る消費税(以下「損失額等」という。)が発生している場合には、顧客が当初届け出た投資可能資金額から当該損失額等を控除した額を、当該顧客の投資可能資金額とする。
3.適合性の原則に照らして不適当と認められる勧誘
(1) 常に、不適当と認められる勧誘
次に掲げる勧誘は、適合性の原則に照らして、常に不適当と認められる勧誘であると考えられる。
・ 未成年、成年被後見人、被保佐人、被補助人、精神障害者、知的障害者及び認知障害の認められる者に対する勧誘
・ 生活保護法による保護を受けている世帯に属する者に対する勧誘
・ 破産者で復権を得ない者に対する勧誘
・ 商品先物取引をするための借入れの勧誘
(2) 原則として、不適当と認められる勧誘
次に掲げる勧誘は、適合性の原則に照らして、原則として不適当と認められる勧誘であると考えられる。
ただし、以下に記載する要件に該当し、かつ、それを4.に記載する社内審査手続において厳格に審査した上で確認した場合には、直ちに適合性の原則に照らし不適当と認められる勧誘にはならないと考えられる。
【原則として不適当と認められる勧誘の類型】
① 給与所得等の定期的所得以外の所得である年金、恩給、退職金、保険金等(以下「年金等」という。)により生計をたてている(注)者に対する勧誘
(注)「生計をたてている」とは、年金等の収入が収入全体の過半を占めている場合をいう。
② 一定以上の収入(注)を有しない者に対する勧誘
(注)「一定以上の収入」は、年間500万円以上を目安とする。
③ 投資可能資金額を超える取引証拠金等を必要とする取引に係る勧誘
(注) 取引を継続するために追証拠金等を預託することにより取引証拠金等の金額が投資可能資金額を超えることとなる場合、顧客に対し追証拠金等を支払って取引を継続するよう勧める行為は、上記の適合性原則に照らして原則として不適当と認められる勧誘に該当する。
④ 一定の高齢者(注1)に対する勧誘
(注1)「一定の高齢者」は、年齢75歳以上を目安とする。
(注2)75歳未満の高齢者についても、損失を被っても生活に支障のない範囲で投資可能資金額が設定されているか、説明を受けた商品先物取引の仕組み・リスク等を十分に理解しているか等について、特に厳格に審査して判断する必要がある(4.【社内審査体制】と同様の審査体制が求められる。)。さらに、厳格な審査を経て取引の開始に至った場合であっても、商品取引員は、当該顧客の損益状況等の取引状況を常時確認することにより、予期せぬ大きな損失を被ることにより、老後の生活の備えとして蓄えた資産まで投資する取引を勧誘することのないように注意することが必要である。
【不適当と認められない例外の要件】
適合性原則に照らして不適当と認められないための例外の要件としては、以下の1)及び2)の双方を満たす必要がある。
1)次の事項を満たしていることを証明できるものがあること。
・ 年金等で生計をたてている者(上記①)及び一定以上の収入を有しない者(上記②)に対する勧誘については、顧客が申告した投資可能資金額の裏付けとなる資産を有していること。
・ 投資可能資金額を超える取引証拠金等を必要とする取引に係る勧誘(上記③)については、ⅰ)顧客が新たに申告した投資可能資金額が損失をしても生活に支障のない範囲で設定されていること及びⅱ)新たな投資可能資金額の裏付けとなる資産を有していること。
・ 一定の高齢者に対する勧誘(上記④)については、ⅰ)当該顧客が、過去一定期間以上(注)にわたり商品先物取引を行った経験があることなど、商品先物取引を行うのにふさわしい十分な投資経験があると認められること及びⅱ)商品先物取引の仕組み・リスクその他説明を受けた事項を的確かつ十分に理解していること。
(注)「過去一定期間以上」は、直近の3年以内に延べ90日以上を目安とする。
2)顧客本人の自書により、自らが適合性原則に照らして原則として不適当と認められる勧誘の対象者であることを理解しているとともに、上記1)の例外の要件を自らが満たすことについて確認している旨の書面による申告があること。
4.社内審査手続等
顧客の適合性については、外務員による一連の勧誘過程における確認に加え、最終的に社内の管理部門において確認することが求められ、勧誘過程において顧客が適合性を有しないことが判明した場合には、直ちに勧誘を中止しなければならない。
また、社内審査手続については、各社で適合性の原則の審査にふさわしい手続を定めることとし、その中で、少なくとも、本店レベルにおいて、①営業部門とは独立した組織である管理部門において上記3.(2)の【不適当と認められない例外の要件】1)及び2)に掲げる要件の適合性を厳格に審査し、②統括管理責任者(最終的に管理部門を統括する役員クラスの者)がこれを決裁することとする。この場合において、審査過程と判断根拠を具体的に記載した書面を作成するとともに、管理部門の職員は営業部門の役職を兼務してはならないものとする。
5.商品先物取引未経験者の保護措置
過去一定期間以上(注1)にわたり商品先物取引の経験がない者に対し、受託契約締結後の一定の期間(注2)において商品先物取引の経験がない者にふさわしい一定取引量(注3)を超える取引の勧誘を行う場合には、適合性原則に照らして、原則として不適当と認められる勧誘となると考えられる。
(注1)「過去一定期間以上」とは、直近の3年以内に延べ90日間以上を目安とする。
(注2)「一定の期間」とは、最初の取引を行う日から最低3ヶ月を経過する日までの期間を目安とする。
(注3)「商品先物取引の経験がない者にふさわしい一定取引量」は、建玉時に預託する取引証拠金等の額が顧客が申告した投資可能資金額の1/3となる水準を目安とする。
さらに、当該期間において、上記の商品先物取引の経験がない顧客に対し投資可能資金額の引上げを勧めることも、適合性原則に照らして不適当と認められる勧誘となると考えられる。
ただし、顧客本人が上記の一定取引量を超える取引を希望する場合にあって、商品先物取引に習熟していると認められる場合に限り、当該期間における当該一定取引量を超える取引に係る勧誘は、直ちに適合性原則に照らして不適当と認められる勧誘にはならないと考えられる。
この場合、商品取引員は、当該顧客から、商品先物取引の経験がない者を保護するために取引量を制限する措置が設けられていること及び上記の例外の要件を理解しているとともに、当該要件を自らが満たすことについて確認している旨の自書による書面での申告を得るとともに、当該顧客が商品先物取引に習熟していることを客観的に確認しなければならないものとする。これらの審査にあたっては、上記4.に記述した社内審査手続と同様の手続きをとる必要がある。
B.不当勧誘規制(法第214条第5号から第7号まで)関係
法第214条における「勧誘」とは、A.で定義した法第215条における「勧誘」と同じ意味であり、商品取引員が顧客に対して、商品先物取引の委託契約締結又は契約締結後の個々の取引の委託の意思形成に影響を与える程度に商品先物取引を勧める行為をいう。
したがって、本条についての次の2.及び3.の禁止行為は、委託契約締結前の勧誘行為のみならず、契約締結後の取引継続期間中における個々の取引の委託の勧誘についても適用される。
1.勧誘の告知・確認の義務(法第214条第7号)
法第214条 商品取引員は、次に掲げる行為をしてはならない。
第7号 商品市場における取引等につき、その勧誘に先立つて、顧客に対し、自己の商号及び商品市場における取引等の勧誘である旨を告げた上でその勧誘を受ける意思の有無を確認することをしないで勧誘すること。
(1)勧誘に先立っての告知
「勧誘に先立つて」「自己の商号及び商品市場における取引等の勧誘である旨」を告げるとは、電話勧誘及び訪問勧誘に当たっては、相手が出たときに、勧誘に入る前に、顧客に対して、自らの会社の名称及びこれから行おうとする勧誘が商品先物取引についての勧誘である旨を告げることである。
(注)例えば、長々と世間話をしたりアンケートと称して会話に引き込んだ後に商品先物取引の勧誘を行うことは本号の違反となる。また、顧客への訪問に先立って電話でアポイントをとる場合においても、本号の告知を行う必要がある。
(注)「自己の商号及び商品市場における取引等の勧誘である旨」を告げる際、商品取引員は、顧客がその勧誘を受けるか否かを判断できるよう、これから行おうとする勧誘がどのような取引についての勧誘なのか明確に伝えるとともに、顧客が商品先物取引を現物の商品や有価証券の取引等と混同することのないよう留意する必要がある。
(2)顧客の意思確認
「勧誘を受ける意思の有無を確認」とは、例えば、「これから商品先物取引の勧誘をさせて頂いてよろしいですか。」等の質問を行うことによって、顧客に勧誘を受ける意思があるかを問いかけ、それに対する顧客の意思表示を明示的に確認することをいう。
このため、商品取引員が顧客の意思表示を待たずに勧誘を開始すること、商品取引員が顧客の意思表示を聞き流して勧誘を開始することは、顧客の意思を適切に確認したことにならない。
また、仮に、顧客が婉曲的な表現を用いるなど、その意思表示に不明な点がある場合は、商品取引員は顧客の意思を再確認することが求められる。
2.委託を行わない旨の意思を表示した顧客への勧誘禁止(法第214条第5号)
法第214条 商品取引員は、次に掲げる行為をしてはならない。
第5号 商品市場における取引等につき、その委託を行わない旨の意思(その委託の勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示した顧客に対し、その委託を勧誘すること。
顧客が委託を行わない旨又は勧誘を受けることを希望しない旨の意思表示には、商品先物取引に関し「いりません。」「関心がありません。」などと表明することが考えられる。
顧客からこのような意思表示が明確になされたにもかかわらず、その内容に反して、当該顧客に対して継続して勧誘すること、又は、その後改めて電話をかけてあるいは顧客を訪問して勧誘を行うことは禁止される。
また、住居の戸口に例えば「勧誘お断り」の表示を掲げているなど、商品先物取引の委託又はその勧誘を望んでいない意思を表明していると考えられる場合には、顧客による事前の指示又は承諾が無い限り、当該顧客に対して勧誘を行うことも本規定に違反すると考えられる。
3.迷惑な仕方での勧誘の禁止(法第214条第6号)
法第214条 商品取引員は、次に掲げる行為をしてはならない。
第6号 商品市場における取引等につき、顧客に対し、迷惑を覚えさせるような仕方でその委託を勧誘すること。
「迷惑を覚えさせるような仕方」とは、社会通念上迷惑であると考えられる時間・場所・方法による勧誘であり、実際に顧客が迷惑と感じることは必要ではない。例えば、次に掲げる勧誘は本規定に違反すると考えられる。ただし、顧客による事前の具体的な指示又は承諾に基づく場合は、違反にはならない。
① 迷惑な時間帯に、電話又は訪問による勧誘を行うこと。
(注)迷惑な時間帯として、夜間・早朝、勤務時間中等が考えられる。
② 顧客の意思に反して、長時間に亘る勧誘を行うこと。
③ 顧客に対し、威迫し、困惑させ、又は不安の念を生じさせるような勧誘を行うこと。
(注)例えば、顧客に対して、声を上げたり乱暴な言葉を使ったりすることにより、相手方に不安の念を生じさせる言動はこれに該当する。ただし、具体的にどのような行為が該当するかについては個々の事例について、行為が行われていた状況等を総合的に勘案し判断される。
④ 顧客が迷惑であると表明した時間・場所・方法で勧誘を行うこと。
C.説明義務等(法第214条、第217条及び第218条)関係
法第217条第1項 商品取引員は、商品市場における取引等の受託を内容とする契約(以下この条から第二百十九条まで及び第三百六十九条第五号において「受託契約」という。)を締結しようとするときは、主務省令で定めるところにより、あらかじめ、顧客に対し次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
第1号 当該受託契約に基づく取引(第二条第八項第四号に掲げる取引にあつては、同号の権利を行使することにより成立する同号イからハまでに掲げる取引)の額(当該受託契約に係る上場商品構成物品又は上場商品指数に係る商品指数ごとに商品取引所の定める取引単位当たりの価額に、当該受託契約に基づく取引の数量を乗じて得た額をいう。)が、当該取引について顧客が預託すべき取引証拠金、委託証拠金、取次証拠金又は清算取次証拠金(次号において「取引証拠金等」という。)の額に比して著しく大きい旨
第2号 商品市場における相場の変動により当該受託契約に基づく取引について当該顧客に損失が生ずることとなるおそれがあり、かつ、当該損失の額が取引証拠金等の額を上回ることとなるおそれがある旨
第3号 前二号に掲げるもののほか、当該受託契約に関する事項であつて、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして政令で定めるもの。
第4号 前三号に掲げるもののほか、当該受託契約の概要その他の主務省令で定める事項
第2項 商品取引員は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該顧客の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて主務省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該書面に記載すべき事項を当該方法により提供した商品取引員は、当該書面を交付したものとみなす。
法第218条第1項 商品取引員は、受託契約を締結しようとする場合において、顧客が商品市場における取引に関する専門的知識及び経験を有する者として主務省令で定める者以外の者であるときは、主務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該顧客に対し、前条第一項各号に掲げる事項について説明をしなければならない。商品取引員は、委託の勧誘を受ける意思を表明した顧客(前述B.参照)に対しては、まず、勧誘の冒頭に法第217条第1項に定める「書面」を交付した上で、対面若しくは電話による口頭で、又は2.(3)に定めるインターネット等を介した方法で、法第218条第1項に定める「説明」を行う必要がある。
(注)例えば、商品取引員が新規の顧客に対して電話による勧誘を行い、書面交付手続を経ずに継続して電話で商品先物取引の説明を行った場合には、第218条第1項に定める「説明」とはならない。
1.契約締結に際しての書面交付(法第217条)
この書面交付は、書面を顧客に直接手交するか又は郵便等の方法によって行うほか、法第217条第2項の規定により、例えば、「インターネット取引を行いたい」旨の意思表示をしている顧客に対しては、インターネットを介して顧客に記載事項を提供する等の電磁的方法で代替することができる。
2.契約締結に際しての説明(法第218条第1項)
(1)商品先物取引の仕組み・リスク等の説明及び顧客の理解確認
商品取引員は、法第218条第1項の説明にあたって、まず、第217条第1項第1号から第3号までに規定する商品先物取引の仕組み・リスク等について説明するものとする。その際、あらかじめ交付した書面の記述や図画の該当箇所を示しながら説明するなどして、顧客が次の事項を容易に理解できるよう留意しつつ説明する必要がある。
・ 商品先物取引は、現物の取引とは異なり、(商品の種類や相場の動向にもよるが)商品先物取引の担保として預託しなければならない商品取引所法で定める取引証拠金等の10~30倍程度の額の取引を行うものであり、相場の変動幅が小さくとも取引額全体では大きな額の変動(つまり、大きな利益又は損失)が生ずるハイリスク・ハイリターンの取引であること。
(注) この説明の際に、商品取引員は「顧客が預託する取引証拠金等の○○倍程度の額の取引を行うことになるので、相場が○○円変動したら、これだけの利益・損失が出る。」というように具体例を用いて説明することが望ましい。
・ 商品先物取引は、預託した取引証拠金等が相場の変動によって短期間に減損するおそれがあり、預託した取引証拠金等の全額を上回る損失が発生するおそれがあること。
商品取引員は、上記の事項を説明した後、これらの事項について、顧客が理解をしていることを書面にて確認するものとする。商品取引員は、顧客の理解が十分でない場合、再度説明する必要がある。なお、電話での説明を行う場合、商品取引員は、通話中にそれぞれの事項についての顧客の理解を口頭で確認するとともに、顧客に確認書面の送付を求め、それにより後日改めて確認するものとする。
(2)その他事項の説明及び顧客の理解確認
上記の理解の確認の後、商品取引員は、顧客に対して、法第217条第1項第4号に基づく商品取引所法施行規則(以下「施行規則」という。)第104条に定める事項について説明するものとする。
この場合においては、以下の点に留意する必要がある。
・ 施行規則第104条第1項第5号に規定する取引証拠金等に関する事項について、取引証拠金等の種類を説明する際には、相場の変動等によって追加的に預託する追証拠金等を含む、商品取引所法において商品先物取引の担保として預託が求められる全ての種類の証拠金について、その発生する仕組みも含めて説明する必要がある。
・ 施行規則第104条第1項第6号に規定する委託手数料に関する事項について説明する際には、取引の損益に加えて委託手数料がかかることを説明するとともに、委託手数料は売り・買い双方の取引に必要か否か、さらには、電子取引や大口取引等において異なる手数料体系を採用している場合におけるその概要についても説明する必要がある。
・ 施行規則第104条第1項第7号に規定する法第214条各号に掲げる行為に関する事項について説明する際には、禁止行為の概要及び当該行為が禁止されている趣旨を説明する必要がある。特に、法第214条第8号及び法第214条第9号に基づく施行規則第103条第2号に掲げる禁止行為については、当該行為が複雑で分かりにくいことから、顧客が理解できるように分かりやすく説明するよう留意する必要がある。この説明の終了後、顧客が施行規則第104条に規定する事項について説明内容を理解していることを、(1)と同様の方法で確認するものとする。
(3)その他
① 顧客が「説明は不要」との意思表示をした場合
法第218条第1項の「商品市場における取引に関する専門知識及び経験を有する者」に該当しない顧客が「説明は不要」との意思表示をした場合でも、商品取引員は、当該顧客への説明を行わずに契約を締結してはならない。
② インターネットを介して説明を行う場合
インターネットを介して説明を行う場合においても、対面による勧誘の場合と同様に、商品取引員は上記手順に準じて説明を行う必要がある。この場合において、商品取引員による「説明」とは、顧客がその操作する電子計算機の画面上で表示される説明事項を読み、その内容を理解した上で画面上のボタンをクリックする等の方法で理解した旨を確認することにより行われるものとする。
3.断定的判断の提供(法第214条第1号)
法第214条 商品取引員は、次に掲げる行為をしてはならない。
第1号 商品市場における取引等につき、顧客に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供してその委託を勧誘すること。
「利益を生ずることが確実である」とは、「必ず」又は「絶対」などというような表現を伴うものに限定される訳ではなく、例えば、「100%とは言えないが値上がりが期待できる。」等の表現も、その表現の前後の文脈や説明の状況から判断して、それが顧客をして「値上がりは間違いない。」と誤解させるものであれば、本規定に違反する。
もっとも、商品取引員の言動が「誤解させるべき」ものであったか否かは当該判断の提供を受ける顧客の属性等を勘案して判断される。例えば、商品先物取引につき専門的知識と豊富な経験を持つ委託者に対しては、商品取引員の断定的な言動が「誤解させるべき断定的判断の提供」に該当しないこともある。
なお、誤解させるべき断定的判断を提供して商品先物取引の委託の勧誘が行われれば、顧客がそれに応じて委託をしたか否か、委託によって損害が生じたか否かは、違法性の判断に影響しない。
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